>>装丁マニアの部屋

装丁マニアの部屋。美し過ぎる「愛なき世界」。

書店で美し過ぎる本を見つけ、思わずジャケ買いしてしまいました。

私、早期退職する前の会社で3年間だけ書籍編集の仕事を担当していたのですが、それ以来、本屋さんで本を手に取る時、内容だけでなく「装丁」にもやたら目がいくようになってしまいました。

「装丁」とは、本のデザインのことです。

「装丁」には、その本の編集者さん、デザイナーさんの思いが隅々まで込められているのですが(作家さんは関わらないことの方が多い)、それらは意外に気づかれていないかも知れません。

たった3年の編集者歴しかない私が偉そうに語れることではありませんが、イチ装丁ファン、装丁マニアとして勝手に解説してしまおうと、このブログのカテゴリー「勉強&体験&趣味」に”装丁マニアの部屋”なんてカテゴリーを作ってしまいました。

本の文章だけを目で追うだけではなく、「本」という物体そのものをあちこち観察して、

「ほほー、このデザインにはこんな意図があるんだろうな」

なんて想像すると、1冊の本で2度楽しむことができるんですよ。

早期退職して無職、無収入になった身にはハードカバーの本を買うなんてことはすごく贅沢なことなのですが、それでもガマンできずに買ってしまったら、ここで紹介してみようと思っています。

今回は、その第一弾。

田中久子さんが装丁を担当されている「愛なき世界」(三浦しをん著)です。

思わず手に取りたくなる美し過ぎる本。

本の概要。

今回紹介するのは以下の本。

人気作家の本など多数手掛けておられる田中久子さんが装丁を担当されています。

基本データ
  • タイトル:愛なき世界
  • 装丁:田中久子
  • 装画:青井秋
  • ジャンル:小説(植物の研究を人生最大の喜びとしている女性と彼女に恋してしまった料理人見習の青年。そして彼らをとりまく愛すべき人たちの物語。)
  • 出版社:中央公論新社
  • 著者:三浦しをん

タイトルだけ見ていると暗い恋愛小説かSF小説みたいですが、笑えてたまにほっこりできる軽いタッチのお話です。

同じ三浦しをんさんの「舟を編む」は言葉変態たちの物語でしたが、こちらはその植物変態たち版という感じ。

カバー。

書店に平置きしてあったこの本に思わず目が釘付け。

この本だけ浮き上がって見えるほど、その美しさが周りの本と比べても際立っている……。

カバーの深い青色の発色がとにかく美しいのです。

「わーキレイ!」とか「可愛い!」と思った時は、名久井直子さんの装丁のことが多いので、今回もそう思って見てみたら田中久子さんでした。

はやし
はやし
間違えてごめんなさい!

編集者と出版の営業担当にとっては「帯」も大切な本の一部なのですが、せっかくの美しさが隠れてしまっているので、自宅に帰ってから外してみました。

おぉぉ……。

変な写り込みがどうして入ってしまうので写真を撮るのも一苦労。

それくらい青色が深く光って輝いています。

個人的にはカバー紙はツヤツヤ光るコート系よりもマット系が好きなのですが、これはコート系の紙ならでは出せる美しさ。

特殊な印刷加工。

ところどころに「箔押し」も。

写真ではわかりにくいですが、「箔押し」とは光沢加工のことです。

この「箔押し」、印刷費が高くなるので、装丁家さんが提案しても編集者が予算の関係で却下することも多い技法。

ある程度売れることが見込まれている本じゃないと、「箔押し」なんて贅沢はできないのです。

この本の場合は、作者が人気作家の三浦しをんさんなので、豪華な装丁にできたのではないかと推測。

そして小説を読み終わってからよく見ると、「箔押し」されているモノたちや植物たちの意味がわかるのも面白い。

裏はこんな感じ。

ボタニカル系を得意とされている青井秋さんのイラストも本当にステキ。

左上に入っているバーコードとかの表示スペースはデザイン的にはかなり邪魔なのですが、サイズなども決まっていて、書店で売る限り必ず入れなければいけないので仕方ないのであります。

表紙。

カバーをめくったところ……

青、群青色、コバルトブルーなど、青色にもいろいろな名称がありますが、「瑠璃色」が一番ぴったりきます。

宝石「瑠璃」のように深く輝く色。

ツヤツヤ過ぎて写り込みが酷くて写真だと全く伝わっていないのが残念。

カバーが植物のイラストなのに対して、なぜ表紙が夜空に星が瞬いているようなデザインになっているのかちょっと不思議だったのですが、物語を読み進めればその答えがわかります。

小説のタイトル「愛なき世界」にも関係しています。

内容とリンクした仕掛けが仕込まれているなんて、実に面白い!

見返しと遊び紙。

本の中もかなり贅沢な作り。

黒色の「見返し」をめくると、パラフィン素材の「遊び紙」が1枚入っています。

これも予算が無いとできない贅沢。まさに「遊び」。

この不思議な図柄が何なのかも物語を読むとわかるので、そういった意味ではデザイン的にも遊んでいるわけです。

面白いなー。

本文デザインとスピン。

本文の上の真ん中に「3」と入っているのは小説の「章」の番号。

こうした細かなデザインも、本によって全く違うので比べてみると面白いです。

伊坂幸太郎さんの本だと、その「章」の主要登場人物がイラストになっていることが多いですよね。

そしてスピン(しおり)の色は緑。

これも小説の内容にあわせて緑を選択したのだと思われます。

細かいところまで本当に凝っています。

まとめ。

「愛なき世界」装丁のココがすごい!
  1. 一瞬で目が引き寄せられる美しさ。
  2. 瑠璃色の美しい発色を最大限に活かしたデザイン。
  3. 小説の内容とリンクした細部の工夫。

ハードカバーの本は文庫本などに比べるとかなりお高いですが、こうしてデザインの細部や紙の手触りまで楽しむと、モトが取れるどころかお得感がダンゼン出てきます。

「こんなことを意図しているのかな」

「小説のヒントがこんなところに!」

などと推理したり、発見したりできると楽しいのですよ。

もし読書を趣味としているならば、是非「装丁マニア」の世界にも足を踏み入れてみてくださいね。

個人的には「本屋大賞」に加えて「装丁大賞」も!「そして、バトンは渡された」。祝・「そして、バトンは渡された」の「本屋大賞」受賞! もともとこの本、ほかにも数々の賞を受賞している名著。 でも実は私、そん...

 

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