よもやま話

本が好きな自分が好き。と改めて思わせてくれた「本屋の新井」。

昨年10月末をもって50代、55歳で早期退職した私。

現在絶賛ぷー太郎中。つまり無収入。

無収入だとやっぱりいろいろ節約する必要があるわけで、今まで躊躇なく買っていたものもガマンすることも多くなるのです。

真っ先にガマンする物の対象になっているのが本。本の購入。

結構な値段がしますからね。

図書館で読めばタダですしね。

でも私、3年間だけですが書籍編集の仕事をしていたこともあり、本が大好きなのですよ。

読むこともですけれど、「本」という物体が好きなのですよ。

その大好きな本のためには、出版業界を潤すためには、たくさんの人が本を買う必要があるわけですよ。

それなのにそれなのに……。

自分で自分を叱咤したくなる気分。

そんな気分になったのは、新井見枝香さんの「本屋の新井」を読んだからなのですけどね。

新井さんとは、本を読むのも売るのも好き過ぎる現役の書店員さんで、いまや直木賞・芥川賞や本屋大賞受賞作品よりも売れると言われている「新井賞」を発表している方。

「本屋の新井」新井見枝香(講談社BOOK倶楽部より)

本は日用品。だから毎日売ってます――。
ときに芥川賞・直木賞よりも売れる「新井賞」の設立者。『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』(秀和システム)も大好評の型破り書店員・新井見枝香による”本屋にまつわる”エッセイ集!
「新文化」連載エッセイ「こじらせ系独身女子の新井ですが」に加え、noteの人気記事、さらには書き下ろしも。装幀、カバーイラスト、挿絵は寄藤文平!

好きな本を買える贅沢。

本づくりは実に楽しい仕事だった。

私、ひょんなことから会社の出版部門に異動となり、3年間だけ書籍編集の仕事を担当していたことがあります。

正直、右も左も何もわからないのにいきなり「本を作れ」「本を売れ」と言われ、担当している時はずっと半泣き状態でなんとか仕事をこなしていた記憶があります。

でも、思い返すととても楽しい仕事でした。

様々な作家さん、アーティストさん、ライターさん、デザイナーさんたちと出会って仕事をするのも楽しかったのですが、特に私が好きだったのは、どんな色、どんな手触りの紙を使って、どんなデザインの本にしようかと考える時。

本に使う紙といっても本当にいろいろで、色だけでも青っぽい紙、ピンクっぽい紙、黄色っぽい紙など様々。

手触りもざらつきが強いもの、マット感があるものなどなど。

デザインについても、表紙のイラストは誰にお願いしようかとか、こんな工夫をしたら面白いんじゃないかとか、ものづくりの楽しさというのを初めて体験させてもらいました。

そういえば「本屋の新井」の装丁を担当されている寄藤文平さんの事務所にも、とある書籍でお世話になったけかな。

「本」という物体が更に好きになった。

そんな体験をしたこともあって、今でも書店に行ってずらっと並んだ本をひとつひとつ手に取って、装丁をじっくり見たり手で触った時の感触を確かめたりするのが大好きなのです。(もちろん汚したりしないように)

物体としての本が大好きなのです。

特にハードカバーの本は私にとっては数段グレードの高い「物体」。

そのハードカバーを何冊かレジに持って行くという行為は、なんとも幸せな気分にさせてくれるのです。

新井さんの本にも、以下の記述がありました。

本が好きという気持ちの何%かは「本が好きな私が好き」という気持ち。

「純粋に本が好き」幻想とはおサラバしよう。

まさに私がハードカバーを何冊か同時に買う時の気持ち。

新井さんでもそんなちょっと不純な気持ちがあるんだと思って、なんだか嬉しくなってしまいました。

本は作っても売っても儲からない。

しかし、本を作ったことのない私は「本が売れない」という現実も嫌というほど知っています。

新井さんの本にも、本や雑誌の利益率の低さや、お客さんが簡単に「ください」という紙袋が高すぎて利益を圧迫しているなどといったことが書かれていますが、本当にそうなのです。

書店もですけれど出版社も本当に儲からない。

大手出版社でも一部のベストセラー作家の本や漫画やキャラクターの版権があるから一応利益が出ているだけで、殆どの本が赤字。

ましてや小さな出版社なんて自転車操業でなんとかしのいでいるだけ。

作家さんについても、音楽業界はカラオケがあるから「憧れの印税生活」ができる人もいますが、本の世界で印税生活ができる人なんて本当に雀の涙ほど。

何年もかけて書いた本の印税収入が数十万円にしかならないなんてこと、ざらにあるわけなのです。

でも、新井さんの以下の言葉にははっとさせられました。

本が売れないのは売れる本が書けない作家のせい?売れる本を切らす出版社のせい?書店は売れる売り場を作っているのに。

でも暗い顔をした自分のせいかも。

嘘でもいいから笑え。本が売れないと嘆く前に。

本を愛する新井さんにとって、売れないのは本のせいではなく自分のせいなのです。

自分はそこまでの気持ちにはなれなかったと今さら反省。

遅過ぎるけど。

本を買うのは贅沢なことだけれど。

最初に書いたように、「本が好き」と言いながらもすっかり買う機会が減ってしまった私。

音楽CDもそうですけれど、作った人にお金が還元される仕組みが発達しないとその業界はどんどん衰退してしまうから、本当に本が好きなのだったら図書館でタダ読みしたりメルカリで買って読むだけではダメなんですよね。

5冊に1冊でもいいからお金を払って買わないとね。

これ、殆ど自分に言い聞かせるために書いているんですけどね。

本を読むことは自分への投資でもあるので、

いきなり!ステーキに行く回数を減らしてでももっと本を買おう!

と心に誓った私なのでした。

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