よもやま話

「人事」の仕事って実は大半がベールに包まれている。

このヒトリデ倶楽部を始めた理由、50代半ばの55歳で早期退職した理由、その両方に「人事の仕事をしていたことが大きくかかわっている」ということを何度か書いてきました。

そこで今回の記事では、会社の「人事」という仕事について少し触れてみたいと思います。

「人事」は社員の人生を左右する仕事。

思い描いていた仕事とはずいぶん違っていた。

人事の仕事を拝命する前は、採用、人事異動の提案、辞令関係の諸手続き、人事考課(評価)、給与計算、社会保険手続き、人間ドック・健康診断等の健康管理業務が主な人事の仕事だと思っていました。

もちろん、それは大枠においては間違いではなかったのですが、実際には想像していなかったような仕事がたくさんあって、最初の頃は戸惑ってばかりでした。

まず、これは私が勤めていた会社特有のことだと思いますが、人事異動については役員がすべて決めていたので、私がかかわるのは決定後の手続きだけでした。

「この社員はここに異動してもらうのが適正ではないか」とか、「組織改編はこうすべきではないか」といったことを考えるのが部長の主な仕事だと思っていたのですが、そういった仕事はほぼ無し。(普通の会社は人事部が担う仕事なんだと思いますよ)

では、想像していなかった仕事とはどんな仕事だったかというと……。

人生を左右するような相談も少なくなかった。

まず最初に断っておきますが、私が担っていた仕事についてあまり詳しいことを書いてしまうと、個人情報に触れる可能性があるので、書けることは限られてしまうということだけはご了承ください。

大切な仕事のひとつが社員との面談で、結構頻繁に依頼されることがあり、相談の内容も様々でした。例えば……

  • 人事考課(評価)の結果に不満がある。
  • 人事異動の対象になった理由が知りたい。
  • 自分の健康状態(フィジカル&メンタル)について相談したい。
  • 家族の事情について相談したい。
  • ハラスメント関連について教えて欲しいことがある。

などなど。

どの相談においても、自分の人生や今後の会社内での処遇にかかわることばかりなので、当然ながらすべて真剣な相談ですし、深刻な内容も少なくありません。

もちろん話を聞くだけで終わったものもありましたが、何かしらの対処を必要とすることも多くあり、しかもその殆どは個人情報にかかわることなので、内密に進める必要がありました。

たぶんどの会社の人事も苦慮していると思いますが、昨今ニュースを騒がせているハラスメント系の対応についても、被害者とされている人と加害者とされている人との言い分や事情がそれぞれあり、本当に難しい問題です。訴えられた人だけを処分すれば済むのでしたら、こんな簡単な仕事はないんですけどね。

ちなみに私、その難しさに悩んでいた経験があるので、ハラスメントに関するニュースを見ても、「詳しい事情を知らない人がアレコレ批評したって仕方がないのに」と、つい思ってしまいます。

病院に付き添う機会も多かった。

メンタルを悪くしてしまう社員というのは、どこの会社にも一定の割合でいます。厚生労働省が出している統計資料によると、生涯でうつ病に罹患する人は、15人に1人という高い割合なのだそうです。

私もメンタル不調の社員に付き添って何度病院に足を運んだかわかりませんが、会社を休むように促したり、復職する際にはきめ細かくフォローするなど、本当に慎重に対応しないといけない仕事でした。

なぜなら、メンタル疾患を持つ社員にかかわる仕事は、人命にもかかわる仕事だからです。

私が人事を拝命してすぐに行った、人事担当者向けのセミナーでは、まず冒頭にこう脅されました。

あなたがたは社員の自殺といった問題にも直面することになるかも知れない。

その場合、あなたたち自身のメンタルを壊さないように気を付けなければいけない。

仕事なのだと割り切って淡々と対処できるくらい、気持ちを強く持っていなければいけないのが人事の仕事だ。

今思い出してもおそろしくなるような言葉で、震えるほど身が引き締まったことを今でも覚えています。

幸い、私が人事を担当していた会社では自殺者は出たことはありませんでしたが、知人の会社で社員が自殺した際、人事担当のメンタルがしばらく不調になったという話も実際に聞いたことがあります。

私の場合も、自殺ではありませんでしたが社員が死亡した際に、ちょっと心身がおかしくなりかけて、心療内科に相談する寸前までいったことはありました。人事の部長がそんなことではダメだろ!がんばれ!と、自分のことを叱咤激励しながら乗り切ったのですけどね。

人事を担当して実感。人生にはいろいろなことが起こる。

人事の仕事で体験したことは、ぜったいにココには書けなくて墓場まで持っていかなければならない話が殆どなので、具体的なことが何も書けず、伝わりにくくて恐縮です。

しかし、これだけは言えます。

ドラマや映画や小説の中だけで見ていたようなことって、実は誰にも起こり得ることなのだということ。

ひとつやふたつではなく、そういったケースを結構頻繁に見てきたので、自分の人生についても、その都度考えさせられました。

だからこそ、

一度しかない人生だからこそ、自分の本当にやりたいことをやって生きていきたい。

一瞬一瞬を大切に生きていきたい。

せっかく得た自分の経験や知識を活かせるようなことがしたい。

……と思い、早期退職もしたし、このヒトリデ倶楽部も始めたのです。

人事という仕事を担当させてもらっていなければ、こうしてこのブログを始めることもなかったと思います。

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