よもやま話

広報時代に見聞きしたフェイクニュースが生まれる瞬間。

大阪なおみさんがアニメ化されているCMの肌色問題について、一部のメディアが本人のコメントを完全な誤訳で報道した。

そしてその誤報についてYahoo!が謝罪した。Yahoo!が謝罪するのは異例のことである。

……そんなことがニュースになっていました。

私も通算10年の広報経験の間でYahoo!の基本スタンスについてはいろいろ知っていたので、謝罪告知を載せているのを見てびっくりしました。本当に異例のことだと思います。

そのニュースとほぼ同時期にTwitterで流れてきた「ドイツでインフルエンザは流行していないのか?そのリツイート大丈夫?」という内容のブログにも目が留まりました。

要約すると、

複数の人たちがドイツではインフルエンザは流行していないとツイートし、それが更にリツイートにより拡散されているが、本当にそれが事実なのか検証してみた。

という内容。

「様々なデータから検証した結果、ドイツでもインフルエンザは大流行しているし、その他にも誤った記述がある」ということを、ツイートした人たちをディスルでもなく客観的に説明してくれていて、ほほーと感心しながら読ませていただきました。

事実でもないことをツイートすることもですが、それを安易に信じて簡単にリツイートするのって、ちょっと危険ですよね。

自分も気をつけねばと思いました。

今回は、このふたつの記事を見て思い出した自分の広報時代の体験について書いてみようと思います。

世の中に誤った情報はあふれている。

誤報を書かれた経験。

通算10年の広報経験の中で、噓八百、事実と全く違うことを報道されたことが大手新聞や真面目な雑誌だけをとっても数回ありました。

事実とちょっと違うという報道も含めると数えきれないほど。

もちろんしっかり書いてくださるメディアや記者さんの方が多いし、広報側も間違ったことを言ってしまうこともあるし、短い記事の中で100%正しいことをまとめるのって本当に難しいことなので、それはある程度仕方のないことだと思っています。

大阪なおみさんの誤訳がそうであったように、人間のすることにはミスは付き物ですしね。(ちょっと酷いとは思うけれど)

大手メディアでもそんなことがたまに起きるので、ネット上にあふれている情報なんて、本当にいい加減なものが多いわけです。

このドイツの話の誤ツイートの中に「ドイツでマスクをしている人をみかけないから」という記述がありますが、海外旅行によく行く人だったら欧米諸国の人たちにマスクをする習慣がないことは知っているので、この時点でちょっとおかしいと気づくとは思うんですけどね。

誤ツイートした人をディスりたいわけではないのでフォローしておくと、この人(お医者さんらしい)も後で訂正ツイートをされているようです。

とにかくTwitterで流れてきたりネットに漂っている情報はすぐに鵜呑みにはせず、リツイートする前に事実かどうかきちんと確かめるか、それができないならヘタにリツイートなんてしない方がよいということかと思います。

私自身も、このブログではしっかり調べたことや自分の目で見聞きしたことしか書いていないつもりではありますが、改めて気をつけねばと自戒した次第。

私も芸能ニュースの”関係者”になっちゃったという話。

私は巷にあふれている芸能ニュースをあまり信じないようにしています。

なぜならこんな経験があったから。

以前私はラジオ局の広報ブログを担当していたのですが、ある時、とある番組の公開放送にエクササイズDVDで大人気になっていた外国人A氏が来た時のことを書きました。

すると数日後、そこに取材にも来ていなかった某週刊誌に、私がブログで書いたことが「関係者によると…」というコメントとして掲載されていたのです。

え??

私、関係者でしたっけ??

ブログに書いただけでコメントしたわけではないですけど??

芸能ニュースによく出てくる「関係者コメント」ってこうやって作られるんだという事実に愕然。

もちろんそんないい加減な記事ばかりではありませんけどね。

テレビのやらせが横行していた時の話。(20年以上前の話)

誤報からはちょっと話がそれますが、私が20年以上前にA社で広報を担当していた時代は、テレビのやらせ取材が横行していました。

もちろんはるか昔の話ですし、今現在はBPOの監視の目もあるし、やらせなんかしたらすぐにSNSで拡散されてしまうので、これから書くような酷い実態はありませんよ。

あくまでも過去の話として読んでくださいね。

その1)個人情報に関する取材依頼。

A社はレンタル業だったため、商品を返却いただくためにお客様の個人情報を扱うことを必須としている会社でした。

当時はまだ個人情報保護法が無かったこともあり、お客様のデータをどこかよその会社に売っているんじゃないかとか、簡単に漏洩しているんじゃないかといったことを疑われることが多く、そんな取材依頼がしょっちゅうありました。

もちろんA社はそんなことはしていませんので、逆に正しいことを知っていただくために取材依頼には丁寧に対応をしていました。

ある時、某テレビ制作会社から個人情報をどう扱っているか取材したい。そのための事前ヒアリングがしたいという依頼がありました。

ヒアリングに来たのは制作会社の若い女性スタッフ。

A社がどれだけ慎重に情報を取り扱っているかということを丁寧に説明したところ……

「思ったよりきっちりされているんですね。でも上司からは、誰かに嘘のコメントを言わせてでも、個人情報が漏洩しているという実態を取材してこいって言われちゃっているんですよ」

……。

あっけにとられてしばらく言葉も出ませんでしたが、気を取り直して

「それってインタビューを捏造しろってことなんじゃないですか?」

と言ったところ、

「そうなんです。私は嫌なんですけど」

と半泣き状態でそのスタッフが白状しました。

そんなことをされたら当社がどれだけの迷惑をこうむるかといったことをとくとくと説明し、その日は帰ってもらいました。

結局その特集は放送されなかったのでよかったのですが、これが私の記憶に残る中では一番酷い取材依頼。

それにしてもあの女性スタッフ、あれからちゃんと仕事は続けられたのかしら……。

その2)バラエティー番組でのやらせ取材依頼。

これもA社の広報時代の話。

A社は店舗を全国展開していたのですが、某テレビ局のバラエティ番組からB街にあるC店への取材協力依頼がありました。

「視聴者からC店にかっこいいスタッフがいるという投稿があったという内容の取材をC店舗内でさせて欲しいのですが」

「なんという名前のスタッフですか?」

「あっ、いえ、モデルの男の子を仕込むので、撮影だけさせて欲しいんです」

「へ??つまりC店に実際にはいないモデルさんをスタッフだと称して撮影するってことですか?」

「はい、そういうことです」

「……」

もうため息しか出ませんでしたが、丁重に、

「すいませんが弊社はやらせ取材は一切お断りしております」

と説明したところ、更に驚くことを言われたのです。

「いや、それすごく困ります。もうB街を紹介することもOA日も決定しているので受けてもらわないと困るんです」

はぁぁぁぁ……。

呆れるを通り越して妙に冷静になりながら、絶対に無理ですとお断りしました。

それからしばらく経った休日、ぼーっとテレビを見ていたら、

「B街のX店にかっこいいスタッフがいるというので取材してきました!」

と聞こえてきたのでビックリして画面を見たところ、B街の同業他社のお店の中でアイドルポーズを決める「男性スタッフ」の様子が紹介されていました。

あーらら。

もう苦笑いしか出ませんでした。

事実は自分で見極めるしかない。

もう一度書きますけれど、これらはもう20年以上前の話ですし、テレビ局やテレビ制作会社は今もうこんな酷い取材はしていません。(そのはず)

テレビのことを批判したかったのではなく、現在はネットの中で同じようなことが横行しているので気を付けた方がいいということを言いたかっただけです。

そしてこのブログでも再三書いているように、私はインターネットもSNSも推奨派なので、ネットがダメだということを書きたいわけでもけっしてありません。

何が真実で何が嘘か自己責任できちんと見極めよう。

自分も嘘や誤りを書いたり拡散したりしないようにしよう。

そう改めて考えさせられたのでした。

 

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