書店でみつけて迷わずレジに持っていく。
そんな本と出会えるということは、とても幸せなこと。
内容はもちろんのこと、美しい「装丁」のとても強い引力に目が引き寄せられることも多々あります。

今回は、数年前に書店でみつけて手に取った瞬間、時間が止まったかと思うほど心が奪われてしまった本をご紹介。
作・森博嗣先生、画・佐久間真人さんの「猫の建築家」と「失われた猫」です。
文と画と装丁の相乗効果で無限大な美しさを感じる本。
本の概要。
今回紹介するのは以下の本。
- タイトル:猫の建築家(2002年10月刊)、失われた猫(2011年12月刊)
- 装丁:泉沢光雄
- 著者:森博嗣、佐久間真人
- ジャンル:絵本
- 出版社:光文社
この本に関しては装丁もステキなのですが、とにかくなにより目を引くのは佐久間真人氏の画。
佐久間氏が描く一見無機質なのに実はとても柔らかい時間を感じられる風景と、そこに添えられた森博嗣先生の哲学的な文章が相まって、無限大の美に酔いしれることができるおとなの絵本なのです。
そして森先生といえば「すべてがFになる」「スカイ・クロラ」等々の大ベストセラー作品をたくさん書かれている小説家さん。
私も書籍編集の仕事をしていた時代にとてもお世話になった大尊敬している先生です。
カバー。
2冊のカバーを並べるとこんな感じ↓

美しい美しい美しい。
うっとり。
表紙と見返し。
カバーをめくった表紙↓

「猫の建築家」の英語タイトルが黒で表記されていて(左)、「失われた猫」の英語タイトルが赤で表記されています(右)。
注目したいのは見返しの紙の色↓が逆になっているということ。

「猫の建築家」の見返しの色が赤(上)、「失われた猫」の見返しの色が黒(下)。
2冊を並べてみるとこんな感じ↓(左が「猫の建築家」で右が「失われた猫」)


2冊の刊行年は2002年、2011年と9年も時間が空いているのに、見事にシンクロしたデザインになっているので、まるでセットで刊行されたかのよう。
本文デザイン。
本文のデザインも空白の使い方が絶妙でとにかく美しい。
うっとり。

絵本なので中の写真はこれくらいに留めておきますが、「猫の建築家」には33枚、「失われた猫」には37枚もの画が掲載されているので、たっぷりその世界観を味わうことができます。
あまりにもこの本が好き過ぎるので、こんな風に↓壁に飾っていつでも手に取れるようにしています。

飾ってあるのがトイレの壁だということはここだけの話ですけれどね。
佐久間真人氏の個展が毎年ギャラリー銀座で開催されているので、ゼッタイに行こうと思いながら、なぜかいつも気が付くのが終わった直後……。
来年こそ忘れないように行くぞ!
まとめ。
- 独特の世界観を持つ佐久間真人氏の画。
- 美しさを際立たせる画と文章と空白の絶妙なバランス。
- シリーズ2冊がシンクロしたデザイン。
この2冊を購入して家に持ち帰って書店の手提げから出した途端、思わず抱きしめてしまいました。
それくらい惚れて大好きで大切にしている2冊なのです。
最後に、私が特に好きな1節を引用しておきます。
時は静かに、
誰のためでもなく、ただ流れる。そこにあったものが消え、
そこになかったものが生まれる。(「失われた猫」より)

